歯科業界の現状と今後の動向 - 歯科医院経営講座~次のステップを目指す歯科医師のための~

歯科業界の現状と今後の動向

人口減少や生活者ニーズの変化など、
歯科業界を取り巻く状況が変わることで、

医院経営のルールが変わり、
これまでの成功事例が通用しなくなってきています。

例えば、2000年には
1億500万人もいた64歳以下の人口が、
2040年には6,800万人にまで減ります。

その中でも、地方は人口の減少率が激しく、
子供の数も減っていきます。

そのため、以前は
優良立地であったロードサイド医院も、
年を追うごとに集患・採用が難しくなっていきます。

本記事では、このようなデータをもとに
歯科業界を取り巻く状況の変化を
整理して見ていきます。


ぜひ、これからの医院経営のあり方について
考えるきっかけにしてください。

1、人口減で起きる医院の競争激化

人口減が進むと、競争が激化し、
小規模な組織の生き残りが難しくなります。

昔は、夫婦で経営している個人商店が
数多く存在しましたが、

今日では個人商店が激減し、
地方の商店街はシャッター通りと化しています。

歯科医院も大型医院に患者様と人材が集中し、
ユニット3、4台の小規模医院は
患者様の獲得と採用が
今後さらに難しくなっていきます。


厚生労働省の調査によると、
個人の歯科医院数は
2004年の5万7千軒をピークに、
2019年の時点で5万3千軒と
4千軒が減少しました。

一方で歯科医療法人は、
1990年の2千4百軒から、
2019年には1万4千8百軒にまで増えました。

30年前の全国の歯科医院数に占める
医療法人の割合はわずか5%未満でしたが、
今日では21%に達します。

売上も個人医院は減少傾向にあります。

2001年当時は売上平均で5千万円でしたが、
2020年には4千百万円と2割も減少しています。

2021年は、新型コロナウイルスの影響が大きく、
個人医院の売上は前年比でマイナス8.4%と
大きく落ち込みました。

逆に歯科医療法人は売上が増えています。

2000年当時、7千万円台の売上平均でしたが、
2019年には1億433万円となり、
4割の増収となっています。

本来、歯科医院の業態構造は、
小規模でも生き残りやすいといえます。

歯科医師の資格者でないと経営ができず、
保険診療制度があり、商圏(診療圏)が狭いため、
一般企業よりも競争が激しくありません。

それでも法人と個人で
これだけ格差が生じているのです。

今後も規模が小さな医院は減少・減収し、
規模が大きな医院が増加・増収していくことは
間違いありません。


そして、その格差は年々広がっていきます。

なお大型歯科医院でも
採用や定着が難しくなっています。
それは一般企業に人材が流れているからです。


歯科衛生士学校の教員は次のように嘆きます。

「卒業生の多くは、
最初に歯科医院へ就職するものの、
転職の際に歯科医院ではなく
一般企業に行ってしまう」

先進国では賃上げの圧力があり、
アメリカニューヨークのウエイトレスの
最低時給は1700円を超え、
チップを含めると3千円を超えます。

日本でも都市圏では飲食店の時給で
1500円を出すところが増えてきました。
当社の事務のアルバイトも
平均時給で1500円です。

若者が都市部に移動し、
地方はますます過疎化するとともに、
都市部でも十分な賃金を払えない組織は
経営が難しくなります。


人材獲得のライバルは近隣の歯科医院ではなく、
待遇と教育体制が整った一般企業なのです。

関連記事: 優秀なスタッフを採用するために

生活者の歯科医院に対するニーズが変化している

20世紀の末まで時間を巻き戻します。
1995年に皆さんは何歳で、
何をされていましたか。

すでに開業されていた
という先生もいらっしゃれば、

勤務医だった、学生だった、子供だった
という方もいらっしゃるでしょう。

世の中はバブル経済が崩壊し、
日本経済は出口のないトンネルの中で
あえいでいましたが、

歯科医院はそれほど
影響を受けていませんでした。

保険診療だけで、
普通に経営していけた時代であり、
スタッフの採用や定着で困っているという
院長先生はあまりいらっしゃいませんでした。

求人誌に案内を出せば、
すぐに応募が来ましたし、
人手不足でどうにもこうにも困る
ということがなかった時代です。

そして現代に戻ります。

文部科学省の学校保健統計調査によると
12歳児の虫歯の本数は
1995年当時の3.7本から、
2020年には、0.68本にまで減少しています。


歯周病に関しても、
8020の達成率は11%から51%へと増えました。

高齢者以外の歯周病罹患率も
毎年右肩下がりで減少傾向にあります。

厚生労働省では、
今後衰退する歯科の3分野として、
小児、保存、補綴を挙げています。

今後も虫歯や歯周病治療、補綴、小児歯科を
診療報酬の柱にしていくと、
将来的に衰退していく可能性が高いでしょう。


予防歯科は日本の歯科医院や歯科企業の間で
ブームになっていますが、

様々な調査の結果、
「歯科医院で予防歯科を受けたい」という、
国民のニーズはほとんどありません。

検索人気キーワードが分かる
グーグルトレンドというツールを使って、
予防歯科、インプラント、ホワイトニング、
歯列矯正、歯周病などの歯科メニューキーワードで、
検索ボリュームを比較してみてください。

予防歯科はあらゆる歯科キーワードの中で
ダントツの最下位です。


しかも地を這うような検索ボリュームの低さです。

冷静になって考えれば分かることですが、
日本では一般の医療機関にも
自ら自費で検診や人間ドックに行く人は
まだまだ少ないのが現状です。

北欧における予防歯科の定着は
政府の政策による賜物です。

一方で成長している分野は
訪問診療と審美歯科です。


高齢化社会の中、
訪問診療はニーズがある一方で、
人材の採用と定着に経営課題があります。

そして施設への営業活動が必須です。
またコロナ禍の影響によるものと思われますが、

厚生労働省の調査では、
2021年に訪問診療は前年比で11%ほど、
売上が落ちています。

審美歯科に関しては、
ホワイトニングのニーズが最も高く、
次に歯列矯正です。

若者の審美ニーズと見た目重視の価値観の増大

若い女性の審美ニーズが高まっています。

弊社ホワイトエッセンスでは、
これまでの顧客の平均年齢は35歳でしたが、
2018年くらいから20代前半の
来院者が急激に増えました。

彼女らは自費診療の受診意欲が旺盛であり、
相応の予算を来院前から想定しています。

この事態を不思議に思い、
顧客インタビューを重ねていったところ、
驚くべきことが分かりました。

彼女らは手取り給料20万円前後の中から、
美容代に月額5万円くらいを使っている方が多く、
実家からの通勤者の中には
毎月10万円を使っている方もいました。

この年代の女性たちは、
その前の世代とは比較にならないくらいに
見た目重視の価値観を持っており、
SNSで人気なのは
イケメン・美女が圧倒的です。


彼女らが美容に投資する理由は、
「異性にモテたいから」という願望ではなく、
見た目のよさが自信となり、
同性からの信頼度に大きく影響するからです。


彼女らに深掘りして質問していくと、
洋服、バッグ、コスメ、ネイルなどのように
デコラティブ(装飾的)な美容・ファッションには
あまりお金を使わず、

洋服はユニクロやGUで十分である一方で、
スキンケア、美容整形、審美歯科など、
元からキレイになれる美容への投資を
惜しまないことが分かってきました。


美容整形や審美歯科において、
毎月の支払いが2万円未満、
24回払いまでであればためらいなく
決済できるという方も多くいらっしゃいました。

なぜ、このような消費性向が
生じてきているのかといえば、
いくつか理由があります。

一つは母親の影響です。
彼女らの母親世代は40代後半から50代にあたりますが、
一世代前の女性と比較すると若々しく、
美容に気を使っています。

娘であるZ世代の女性たちは
母親の美意識に触発されるとともに、
母親のスッピンを見て若いころから
美容ケアをしておかないと
取り返しがつかないことを学びます。

次にSNSの普及です。
スマホネイティブの彼女らは
SNSを通じたコミュニケーションを頻繁に取ります。

SNS上では容姿を盛れますが、
実物と違いすぎると恥ずかしいという思いから
顔隠し派が増える中、
元顔のレベルを上げたいという願望があります。

元顔のレベルとは
生まれながらの容姿の美しさというよりも、
無理のない美容努力の継続によって
獲得できたスッピンの美しさであり、

それが自信となり、
同世代女性からの好感度や信頼度にも
大きく影響することを彼女らは実感しています。

化粧には相応の時間を要しますが、
美容整形や審美歯科で元からキレイになっておけば
朝の忙しい時間を取られません。

いつの時代も
流行は若者によってつくり出されます。

人生100年時代といわれる中で、
「実年齢よりも若く見られたい」
という気持ちから、

経済的な余裕がある50代以上の
来院者も増えています。

90歳前後の方も
審美歯科を求めて来院されます。

審美歯科のニーズは
時代の要請ともいえます。

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